数学、ときどき統計、ところによりIT

理論と実践の狭間で漂流する数学趣味人の記録

はじめて機械学習の書籍を購入してみた

ここ最近、統計的機械学習という分野が流行っています。

自分は流行とは全く無関係に数理統計学を勉強している訳ですが、流行っているのを横目で見ているとやはり気にはなるもので、遅ればせながら本格的な書籍を読んでみたくなりました。ネットで調べてみると、

 C.M.ビショップ:パターン認識機械学習*1

が代表的な書籍だということが分かりました。

そこで地元の図書館へ行ってみると所蔵していないことが分かり*2、それなら買って読むしかないと諦め、東京丸の内丸善に出かけました。

理工系書籍コーナーに行きビショップ本が鎮座しているのを発見。早速、手に取りページを捲ってみました。初見の印象は

 「うーん、買うの止めようかな…」

でした。

ざっと見て、仮定している知識はいずれも初等的なレベルの線形代数微分積分、確率論であることは分かりました。このレベルの記述だと基本概念の説明があやふやで終わるであろうことは過去の統計学の学習の経験から何となく推測出来ました。もし自分がビショップ本を読み始めると、確率論の部分を測度論的確率論で書き直し、使われている多変数の微積分やベクトル解析*3多様体上の微分積分の流儀を使って綺麗に書き直し、最適化問題の部分は凸解析や関数解析を使って書き直し、とやりたくなるはずで、そうなるとビショップ本とは別の学術書が出来上がってしまいます。自分が学生だったら面白がってやったかもしれませんが、如何せん社会人にはそれだけの時間*4はありません。とても購入には踏み切れませんでした。

ビショップ本を買おうと心を決めて*5勇んで丸善まで出向いてきた挙句、完全に空振りに終わってしまい、この持って行き場の無い気持ちをどうすれば良いのか。

仕方なく他の書籍を見ている中で、濃いブルーの派手な表紙に「機械学習プロフェッショナルシリーズ」と銘打った塊が目に入ってきました。取りあえずそれらにも目を通して置こうと手当たり次第、パラパラパラ、と流すように見ていったとき「おっ」と思える1冊がありました。

 金森敬文:統計的学習理論

測度論や凸解析、関数解析といった知識を仮定して議論を行っている書籍でした。機械学習関連の理論的な書籍の中で「これなら読めそうだ」と思えた初めての書籍でした。

購入から1週間経って未だ積読状態ですが、本ブログの数理統計学の連載を統計的仮説検定まで終えることが出来たら読み始めようと思っています。

*1:別名、PRML、ビショップ本、黄色い本

*2:公立図書館には専門書なんて置いている訳が無いのですが、過去にお宝本を見つけてしまった時の感覚が忘れられないため、どうしても一番最初に当たる先が図書館になってしまっています。

*3:現代的に言えばベクトル解析は多様体上の微分積分学の一部として解析学的にとても綺麗な体系をしているのですが、一般に流布している古典的なベクトル解析は概念上の問題およびそれに伴う記述上の問題があり、解析学としての体系性や完成度とは程遠い、単なるジャーゴンに成り果ててしまっています。

*4:あと体力も…(苦笑)

*5:専門書は安くありませんから買うのにはそれなりの覚悟が要ります。