テンソル積は同型を除いて唯1つに決まりますが、この「同型を除いて」というのが曲者で、一見すると別物なのに同じものを表している、ということが起こります。これがテンソルの実態を掴みにくくしている理由の1つになっています。今回はその点について詳しく見ていきたいと思います。
双線型汎関数としてのテンソル
双線型写像 を
で定義すると は
と
のテンソル積である。
証明 、
とおく。
について
が成り立つ。実際、、
の任意の基底をそれぞれ
、
とし、さらにその双対基底をそれぞれ
、
とすると任意の
、
は
と書くことが出来るから、
よって任意の に対して\begin{equation*}\begin{split}\phi(F,G) & =\phi\left(\sum_{i}F_{i}a_{i}^{*},\,\sum_{j}G_{j}b_{j}^{*}\right)\\& =\sum_{i,j}F_{i}G_{j}\phi(a_{i}^{*},b_{j}^{*})\\& =\sum_{i,j}\kappa(a_{i},b_{j})(F,G)\cdot\phi(a_{i}^{*},b_{j}^{*})\\&=\left(\sum_{i,j}\phi(a_{i}^{*},b_{j}^{*})\kappa(a_{i},b_{j})\right)(F,G)\end{split}\end{equation*}となり
の線型和で書ける。
次に を線型空間、
とする。このとき
を
と定義すると、 はwell-definedである。つまり
は基底
、
の取り方に依存しないことが示せる。
に対して
であるから
つまり図式\begin{equation*}\xymatrix{V\times W\ar[rd]_{\Phi_{U}}\ar[r]^{\kappa} & T\ar[d]^{f_{U}}\\ & U}\end{equation*}は可換になる。
の一意性を示す。
とすると\begin{align*}f_{U}(\phi) & =\sum_{i,j}\phi(a_{i}^{*},b_{j}^{*})\Phi_{U}(a_{i},b_{j})\\& =\sum_{i,j}\phi(a_{i}^{*},b_{j}^{*})(f\,'_{U}\circ\kappa)(a_{i},b_{j})\\& =f'_{U}\left(\sum_{i,j}\phi(a_{i}^{*},b_{j}^{*})\kappa(a_{i},b_{j})\right)\\& =f'_{U}(\phi).\end{align*}最後に の一意性を示す。
、
を
と
のテンソル積とする。このとき図式\begin{equation*}\xymatrix{V\times W\ar[rd]_{\kappa'}\ar[r]^{\kappa} & T\ar[d]^{f}\\ & T'}
\end{equation*}を可換にする、つまり を満たす
がただ1つ存在する。同様に図式
\begin{equation*}\xymatrix{V\times W\ar[rd]_{\kappa}\ar[r]^{\kappa'} & T'\ar[d]^{f'}\\ & T}\end{equation*}を可換にする、つまり を満たす
がただ1つ存在する。よって
一方、 であるから一意性によって
となる。同様に
も成り立つ。以上より
と
は線型同型である。(証明終)
上記の定理は が
の具体的表現の1つであることを示しています*1。
線型写像としてのテンソル
双線型写像 を
で定義すると は
と
のテンソル積である。
証明 、
とおく。
、
の任意の基底をそれぞれ
、
とし、さらにその双対基底をそれぞれ
、
とする。このとき任意の
が
と書けることに注意する。任意の線型空間 と
に対して
を
と定義すると はwell-definedである、つまり
は基底
、
の取り方に依存しないことが示せる。そして
は
を満たす唯1つの線型写像になっている。以上から
がテンソル積である。(証明終)
上記の定理から もテンソル積
の具体的な表現の1つであることが分かります。
こうして実体としては1つのテンソルが複数の表現を取ることを見ました。応用の場面では、議論を円滑に進める為にこの性質がしばしば用いられます*2。